【File No.7】ワイルド・Bison

ワイルド・Bison

 

「Bison」というガンスミスが造り上げた一般市場に決して出回る事の無い、

特殊なカスタム・リボルバーが数種類、世に存在する。

 

そのカスタムの中に於ける「Caesar(シーザー)」 「Kaiser(カイザー)」

のネーミングを持つ大口径リボルバーは、

マグナム弾を遥かに上回る特殊な弾丸を発射出来る。

 

通常は44口径のカートが納まる標準のシリンダーが装着されているが、

ワンタッチでそのシリンダーを外す事が出来る。

この構造がこのGUNの最大の特徴であり重要なポイントと成っている。

 

Bisonは以前から44MAGリボルバー用のワイルドキャット弾の製作に着手していた。

 

ワイルドキャット弾とは銃器用語の中で自作カートリッジの事を指し、

「乱暴・向こう見ず」といった意味を規格外弾薬にもじって付けられた名称である。

 

彼は特殊な火薬を使用する事で

44マグナムを遥かに上回る威力の44カートを造ろうとしていたが、

造り出した特殊カートは、発射時の高熱と爆発力とで薬莢を大きく膨張させ

シリンダーから排出する事が出来ない程に変形させていた。

 

 

しかし彼は、

 

「薬莢を排出出来ないのであればシリンダーごと交換すれば良い。」

 

と何とも彼らしい大胆な打開策を思案する。

 

その考えは更に過激な方向へと発展し、

遂には44口径のシリンダー・ホールを弾頭部のみ残し可能な限り広げてしまった。

 

そして弾頭部(シリンダー先端部)に直接44口径の弾丸をセットし、

広げられた6つのシリンダー・ホールに大量の火薬を「直接」埋め込んだ。

 

そう、彼は「シリンダー」それ自体を1つの薬莢に仕立ててしまった。

 

肉厚を保つ為にフルートは無く、大きく広げられた6つの穴に収まった大量の特殊火薬は

44口径の弾丸を考えられない威力で発射させる。

 

6発の弾丸を撃ち終わると

用済みとなったシリンダーをそれごと交換するといったその考えは、

発想としては実に面白いものだ。

 

が、しかしそれだけの発射抗力を

果たして中折れ式のブレイク・フレームで耐えうるのであろうか・・・。

 

答えはNOである。

 

ブレイク銃はそもそも通常のフレームよりも硬度的にやわで、

とてもその様なクレージーな構想に耐えうる物ではない。

Bisonもその事は熟知していた。

 

しかし容易にシリンダーを交換する事が出来るブレイク銃の持つメリットに目を付けた彼は、

それに耐えうる十分な硬度を持ち合わせたブレイク機構とフレーム構造を設計し造り上げた。

それが「M29・Devil’s・シーザー」と「レッドホーク・INSIST・カイザー」の2丁である。

 

その2丁が放つ驚異的な弾丸はワイルドキャット(山猫)などの段では無く、

あたかも血に飢えた猛牛が、研ぎ澄まされた鋭利なツノを不気味に光らせ、

狂った様に突進してくる、まさにBison(野牛)のような弾丸である。

 

彼はその弾丸を「ワイルド・Bison」と名づけた。

 

そんな凶暴な弾丸をも難なく手なずけてしまう「Caesar」と「Kaiser」は、

ハンドガンの中に於ける「King of King」である事は間違い無いであろう。

 

しかし、Bisonのカスタム・リボルバーは、

ある特殊な機関の人物達にしか提供されず、

一般の人達がそれを目にする事も、

その名を耳にする事すら皆無に等しい。

 

そんな彼が造った「カスタム・Bison」が今日、

何故か日本国内に於いてトイガンとして密かにネットの中で販売されている。

 

しかし、それを手にしたユーザー達は、その銃が如何なる物で、

どのような人達が愛用しているのかなど知る術も無い。

何故ならば、「Bison」もその使い手達も、決して表に出る事が無く

ごくごくわずかな人達の記憶の中の存在でしかないからだ。

 

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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。