【File No.12】エネルギーの炸裂

エネルギーの炸裂

 

自分達が世間の目を偽って行ってきた事実が、

明るみに出る事を恐れるある機関の人間達は、

その真実を語りえる証人を今、容赦なく地球上から抹殺しようと襲い掛かる。

 

高度を下げてきた戦闘機のパイロットの眼前に巨大なつり橋が迫った。

パイロットは再び上空へ回避するか、

水面すれすれを飛行して目標を攻撃するかの二択を迫られた。

 

ここから橋までは、数瞬しかない。

一度高度を稼ぎ、再び追尾に入るか。

それとも、

このまま追尾を続け、確実に敵をしとめるか。

 

迫りくる橋を前に、

パイロットは目標を見失うことを恐れた。

 

高度を下げ、高速船の背後に機体をつける。

 

戦闘機と高速船の速度には

あまりに違いがあった。

 

見る間に互いの距離が迫っていく。

 

橋の下をくぐるために

ジェット機が水面ぎりぎりまで高度を下げた。

 

 

その時、

遥か後方でエンジンをブロウさせ

完全に息絶えたマイバッハの中でスピード・キングが叫んだ。

 

「なめるんじゃねぇ~~~!」

 

ギヤをニュートラルに入れ、

黄色いスイッチカバーを開け、

ボタンを押した。

 

キングのヘッドフォンからは、

Van Halen の

I Can’t Stop Loving You が大音量で鳴り響き、

騎手が馬の尻を叩くように

ボーカルのサミー・ヘイガーが気合を込めて叫ぶ。

 

(※ こちらの曲を聴きながらお楽しみください)

 

すると息絶えたはずのマイバッハが

爆音をあげて加速しだした。

 

その加速はターボよりも

ニトロですら及ばない程の凄まじい加速で

ジェット戦闘機に迫ってくる。

 

マイバッハのリヤからは

2基の小型ジェットエンジン が炸裂し、

エンジン駆動ではなく

ジェット推進によってグングンと加速してくる。

 

「いくぜアドバン!」

 

そう叫んでキングはギヤをドライブに叩き込んだ。

 

すると、

ジェットエンジンによって地面を勢いよく回転するタイヤの回転トルクが

止まっていたガトリング砲に伝わり

エンジン駆動の時とは

比較にならない程の凄まじさで回転しだした。

 

ジェット加速したマイバッハは

河川敷の道路を音速で一気に突き抜け

歯止の縁石に乗り上げ

水面上空に舞い上がり

遂に水面すれすれを飛行してきたF-16戦闘機の真横に並んだ。

 

 

「そ、そんな馬鹿な!!」

 

驚き叫んだパイロットの脳裏に

その有り得ない光景が

まるで

スローモーションでも見るかのように映った。

 

横並びにF-16操縦席に突きつけたガトリング砲を

アドバンは機体の方へ照準をずらし

発射ボタンを押した。

 

至近距離から連射された弾丸は

機体をぶち抜き

貫通して金属片が空中に飛び交う。

 

パイロットは即座に脱出ボタンを押し

勢い良く上空に舞いあがっていく。

 

撃ち抜かれた戦闘機は空中で大爆発を起こし

ジュット燃料を一気に使い果たしたマイバッハは

失速し海中に飛び込んだ。

 

海中に沈んで行くマイバッハの中から

キングとアドバンが脱出して

海面に姿を現した時、

引き返してきたド派手なDestinyカラーの高速船から

ロープに繋がれた浮き輪が二つ投げ出された。

 

キングは浮き輪を掴み取ると

 

「ざまぁ~みやがれ」

 

とパラシュートで落下してくるパイロットに向かって呟いた。

甲板に上がるとマックスがアドバンに言った。

 

「水も滴るいい男だぜ!」

 

「おれは?」

 

とキングが聞き返すと、

 

「髪の毛がワカメだな」

 

と、キングが最近気になって仕方ない頭の絶妙なハゲ具合をハマーが鋭く指摘した。

 

するとキャサリンが、

 

「毛が残ってるだけハマーよりはマシよ」

 

と、フォローになってない言葉でキングをいたわった。

 

一行は、ニコラが待つドイツに向けてニューヨーク港を出航した。

国家レベルで博士を亡きものにしようと襲ってくることも予測していたJusticeは、

そういった事態に備え、博士をスイス・ジュネーブにある国連欧州本部へ送り届ける手筈も整えていた。

 

上空に鮮やかなDestinyカラーのティルトローター機V-22が現れ高速船の護衛についた。

 

 

青空一杯に

デェイ・ジーが流す

Van Halen の I Can’t Stop Loving You が響き渡る。

 

Wild-Bison Vol.4 END

第一部フィナーレへ続く

 

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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。