【File No.10】背後の敵

背後の敵

 

タイムズ・スクエアーがある高層ビル街ミッドタウンを通り抜けると、

マンハッタン島の南端のダウンタウンに位置する

異国の情緒漂うチャイナ・タウンが見えてくる。

 

 

そこがNYで、アメリカである事さえ忘れさせてしまう街並みは、

雑多でエキゾチックで、活気のある街。

 

チャイナ・タウン

 

そのチャイナタウンをイースト川河口に向けて

猛スピードで突き進んで行く2台の車両。

 

この地区までは、緊急警備がひかれてなく、

食事を楽しみにきた観光客や安い食材を求めてショッピングを楽しんでいた人々が、

2台の暴走車両に驚きの視線を集め、

さらに上空から高度を下げて突っ込んで来るF-16戦闘機の爆音に

腰を抜かして地べたに這い蹲る人も。

 

「デェイ・ジー、戦闘機をこっちに引き付けておくから
その間に、ハマーの車を高速船に向かわせろ」

 

「OK! お先に高速船でまってるぜ!」

 

アドバンが無線で後ろに付いてきたハマーのFORDに乗るデェイ・ジーに指示を飛ばし、

ハマーのFORDが、アドバンのマイバッハから外れ、脇道に入り込んだ。

 

F-16戦闘機は、

大通りを直進して河川敷に突き進むマイバッハ目掛けて突っ込んでいく。

その翼にはミサイルがまだ1発残っていた。

 

「河川敷に向かってる奴なら、ミサイルが使えるな」

 

ニヤリと薄ら笑いを浮かべ、

パイロットがマイバッハに向けて発射スイッチを押した。

ハマーのFORDからデェイ・ジーが叫んだ。

 

「キング! ミサイルを打ち込まれたぞ!」

 

キングがブレーキングで車体を横向け、

アクセルで直角に飛び出し

ミサイルを交わした瞬間、

その動きを見透かしたように

ミサイルの後を追ってきたF-16戦闘機が

ガトリング砲でマイバッハを捉えていた。

 

「そうくるだろと思っていたぜ!」

 

キャサリンのヴァイロンの身のこなしを

見せ付けられたパイロットも馬鹿じゃなかった。

 

戦闘機を操縦するぐらいの人間ともなると、

瞬時に状況に応じた攻撃パターンを作り出す。

 

パイロットが「シテヤッタリ!」とばかりにスイッチを押した。

 

縦のラインからサイドブレーキでテールを流し

白煙をあげて直角に横向きに飛び出そうとするマイバッハに

ガトリング砲の弾丸が

路面を弾き飛ばしながらまっすぐに迫ってくる。

 

助手席側から突っ込んでくる戦闘機に

完全に背を向けてガトリング砲を握っているアドバンに

とっさにキングが叫ぶ。

 

「伏せろアドバン!」

 

(伏せろと言われても・・・)

アドバンは身をシートに沈め

ガトリング砲の銃口を

可能な限り高く構え

通過した戦闘機を後方から

打ち落とそうと

グリップを握り締め

今はまだ姿の見えない

背後の戦闘機の通過ライン上に

照準を絞り込む。

 

背中から迫ってくる

弾丸の連射音と

ジェット機の轟音が

凄まじい勢いで

脅威を増長しながら

津波のように襲い掛かる。

 

戦闘機が放った弾丸は

横向いたマイバッハのボンネットを

火花をあげて縦に撃ち抜いた。

 

次の瞬間、

オープンになっている

マイバッハ助手席に構えるアドバンに

ジェットエンジンの爆風が

猛烈に降りかかる。

 

思わず目を閉じてしまいそうな程の爆風の中

レイバンのサングラス越しに

アドバンの鋭い眼光が

音速で姿を現した上空の的を捉えた。

 

如何なる状況下にあっても

常に冷静に

憎らしい程クールに

敵を捉えるアドバンが、

ガトリング砲の発射スイッチを押し込んだ。

 

と、その時

ガトリング砲の回転が止まった!

 

ボンネットを撃ち抜かれたマイバッハが、

白煙をあげてエンジンブロウし

完全に息絶え止まってしまった。

 

エンジン駆動と連結している

ガトリング砲の回転も止まってしまった。

 

(・・・おいおい・・・)

 

それでも冷静さを失わないアドバンとは対照的に

 

「あの野郎ぉ~~~! ただで済むと思うなよ!

絶対ぶち落としてやるぜ!」

 

と、運転席のスピード・キングは

怒りをむき出しにして咥えてたタバコを窓から投げ捨てた。

——————————

 

※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。