【File No.7】Wild-Bison・バンド

Wild-Bison・バンド

 

そんな宴にも、終わりの時がやってくる。

 

「ねえ、みんな。提案したことがあるんだけど、聞いてくれない?」

 

皆が熱狂から覚めはじめた頃をみはからって、マリーが口を開いた。

 

「ん~? どうした、マリー」

 

酔って少しろれつがまわらない口調で、ロンが問い返す。

 

彼女が切り出したのは、

せっかくこれだけの演奏が出来るのだから、

孤児院に出向いて演奏してあげたらどうか? という提案だった。

 

施設には社会に溶け込めない、いわゆる不良と呼ばれる若者も数多くいる。

そういった連中にこそ、音楽の楽しさを伝えてあげて欲しいと、マリーは語った。

 

「なるほどなあ……。俺はかまわんよ。マリーの頼みだしな」

 

ケイクが即座にうなずいた。

 

「不良連中の、不良っぷりに磨きをかけちまったらどうすんだよ?」

 

コンバット・デェイ・ジーが、ちゃめっけたっぷりにまぜっかえす。

もちろん、冗談だ。その顔は、怪しげに笑っている。

 

「おいおい、ロックやってりゃ不良って……。

そりゃいつの、どこの国の話だよ? っつーか、お前、年いくつだ?」

 

スピード・キングが、笑いながら突っ込みをいれた。

 

「はっは。ちげえねえ。で、具体的にはどうするよ?」

 

そこでハマーが、二人に割って入った。

 

「じゃあ俺のFORD-650に特設ステージ・トレーラーを連結して、

ステージ丸ごと乗込むってのはどうだ?」

 

「おお、それ、おもしれ~な」

 

すかさず、ロンが目を輝かせた。

 

「外に若い連中を待たせてるところに、

いきなりでかいトレーラーをドンと横付けして。

ぱかっと開いたらいきなりステージ出現。

そのままロックをぶちかます! いいねえ、やろうぜ!」

 

ロンの熱っぽい口調に、皆も口々に賛成の意を示す。

 

「で、ニコラとアドバンは?」

 

黙って話を聞いていた二人に、ケイクが確かめた。

 

「私はかまわないよ。なかなか面白そうだ」

 

「俺も……いいですよ」

 

うなずいた二人に、ケイクがパン! と手を打つ。

 

「よし、決まりだ! じゃあ……」

 

段取りを決めるために話を続けようとしたケイクを、ロンがさえぎる。

 

「ちょーっと待った! せっかくだから、バンド名も決めようぜ!」

 

「いいね~。で、なんにする?」

 

途端に、皆が口々に自分のチーム名を挙げ始めた。

 

「そりゃ、Reverieだろ?」

 

ケイクが当然といった顔で答える。

 

「何言ってやがる、Barracudaに決まってんだろーが!」

 

ロンが猛然と反発した。

 

「いや、Kampferこそふさわしい」

 

ニコラが淡々と、しかし、きっぱりと断言する。

 

「……Destinyっすよ」

 

ぼそりとアドバンがつぶやいた。

 

「こりゃあ、収集がつかないわねえ」

 

侃々諤々、延々と言い合いを続ける男たちを見ながら、ママがため息をついた。

 

「そうね~、みんな自分のチームを出してくるから、後に退けないもの」

 

マリーもおかしそうに笑う。

まるで子供のように言い合う、マリーの大切な「おじさん」たち。

 

中には若手も混じっているが、ことこの件に関しては、

精神年齢は似たりよったりというところだろう。

 

「だーっ、これじゃ、いつまでたっても決まらん!

いっそのこと、『Bison・バンド』にでもするかぁ?」

 

とロンが冗談半分で投げやりに言った言葉に皆が食いついた。

 

「それ、意外といいんじゃね」

 

「えええぇ! 冗談だぜ! 冗談! いくらなんでもダサすぎるだろ!」

 

「じゃあ、Wild-Bison・バンドでどうよ」

 

「おお~いいねー!」

 

「じゃあ、Wild-Bison・バンドで決定~!」

 

「えええぇ~!」

 

ロン一人が猛反対する中、バンド名は決定した。

 

さて、次はいよいよ最終コーナーでの
ド派手なBisonアクションの炸裂にご期待下さい。
第1ステージの締めくくり、気合いを込めて
アクセル全快で突っ込んでいきます。

 

Wild-Bison Vol.3 END

 

——————————

 

※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。