Wild-Bison・バンド
そんな宴にも、終わりの時がやってくる。
「ねえ、みんな。提案したことがあるんだけど、聞いてくれない?」
皆が熱狂から覚めはじめた頃をみはからって、マリーが口を開いた。
「ん~? どうした、マリー」
酔って少しろれつがまわらない口調で、ロンが問い返す。
彼女が切り出したのは、
せっかくこれだけの演奏が出来るのだから、
孤児院に出向いて演奏してあげたらどうか? という提案だった。
施設には社会に溶け込めない、いわゆる不良と呼ばれる若者も数多くいる。
そういった連中にこそ、音楽の楽しさを伝えてあげて欲しいと、マリーは語った。
「なるほどなあ……。俺はかまわんよ。マリーの頼みだしな」
ケイクが即座にうなずいた。
「不良連中の、不良っぷりに磨きをかけちまったらどうすんだよ?」
コンバット・デェイ・ジーが、ちゃめっけたっぷりにまぜっかえす。
もちろん、冗談だ。その顔は、怪しげに笑っている。
「おいおい、ロックやってりゃ不良って……。
そりゃいつの、どこの国の話だよ? っつーか、お前、年いくつだ?」
スピード・キングが、笑いながら突っ込みをいれた。
「はっは。ちげえねえ。で、具体的にはどうするよ?」
そこでハマーが、二人に割って入った。
「じゃあ俺のFORD-650に特設ステージ・トレーラーを連結して、
ステージ丸ごと乗込むってのはどうだ?」
「おお、それ、おもしれ~な」
すかさず、ロンが目を輝かせた。
「外に若い連中を待たせてるところに、
いきなりでかいトレーラーをドンと横付けして。
ぱかっと開いたらいきなりステージ出現。
そのままロックをぶちかます! いいねえ、やろうぜ!」
ロンの熱っぽい口調に、皆も口々に賛成の意を示す。
「で、ニコラとアドバンは?」
黙って話を聞いていた二人に、ケイクが確かめた。
「私はかまわないよ。なかなか面白そうだ」
「俺も……いいですよ」
うなずいた二人に、ケイクがパン! と手を打つ。
「よし、決まりだ! じゃあ……」
段取りを決めるために話を続けようとしたケイクを、ロンがさえぎる。
「ちょーっと待った! せっかくだから、バンド名も決めようぜ!」
「いいね~。で、なんにする?」
途端に、皆が口々に自分のチーム名を挙げ始めた。
「そりゃ、Reverieだろ?」
ケイクが当然といった顔で答える。
「何言ってやがる、Barracudaに決まってんだろーが!」
ロンが猛然と反発した。
「いや、Kampferこそふさわしい」
ニコラが淡々と、しかし、きっぱりと断言する。
「……Destinyっすよ」
ぼそりとアドバンがつぶやいた。
「こりゃあ、収集がつかないわねえ」
侃々諤々、延々と言い合いを続ける男たちを見ながら、ママがため息をついた。
「そうね~、みんな自分のチームを出してくるから、後に退けないもの」
マリーもおかしそうに笑う。
まるで子供のように言い合う、マリーの大切な「おじさん」たち。
中には若手も混じっているが、ことこの件に関しては、
精神年齢は似たりよったりというところだろう。
「だーっ、これじゃ、いつまでたっても決まらん!
いっそのこと、『Bison・バンド』にでもするかぁ?」
とロンが冗談半分で投げやりに言った言葉に皆が食いついた。
「それ、意外といいんじゃね」
「えええぇ! 冗談だぜ! 冗談! いくらなんでもダサすぎるだろ!」
「じゃあ、Wild-Bison・バンドでどうよ」
「おお~いいねー!」
「じゃあ、Wild-Bison・バンドで決定~!」
「えええぇ~!」
ロン一人が猛反対する中、バンド名は決定した。
さて、次はいよいよ最終コーナーでの
ド派手なBisonアクションの炸裂にご期待下さい。
第1ステージの締めくくり、気合いを込めて
アクセル全快で突っ込んでいきます。
Wild-Bison Vol.3 END
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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。
ストーリーはフィクションであり
実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。