【File No.4】Rock’n Roll

Rock’n Roll

 

「皆さんこんにちは、

ロックン・ローラーのBisonです。

それでは、まず景気づけに一曲ブチかまします」

 

静まりかえったBison工房の片隅にある

小さな手作りの今にも床が落ちてしまいそうなみすごらしい、おんぼろステージで、

マイクスタンドを永ちゃんのようにかっこよく握り締めて私はつぶやいた。

 

「おっさん、誰に向かってつぶやいてんだ?

皆さんなんか一人もいねぇ~ぞ」

 

後ろから、つまらん突っ込みを入れえてくるのは言うまでも無くあいつだ。

 

「いいから、とっとと唸らせろ」

 

「OK! いくぜぇ~!」

 

といってロンのリード・ギターが旋律を唸らせて

チャック・ベリーのジョニ・B・グッドが弾け飛ぶ♪

 

(※ こちらの曲を聴きながらお楽しみください)

 

ハマーのドラムが軽快な8ビットを刻み

クレイジー・ドッグのベースがビートにあわせて踊りだす♪

 

Way down in Louisiana close to New Orleans

Way back up in the woods among the evergreens

There stood a log cabin made of earth and wood

Where lived a country boy name of Johnny B. Goode

He never ever learned to read or write so well

But he could play the guitar like ringing a bell

 

ニコラが打楽器のようにピアノの鍵盤を連打して、煽り水をぶち噛ます♪

 

Go go!
Go Johnny go, go!
Go Johnny go, go!
Go Johnny go, go!
Johnny B. Goode

 

「ちょぉ~~~~と待て!
今、誰が音外さなかったか!?」

 

「俺じゃねぇ~ぞ!」

 

そう言って真っ先に反論したのは、他ならぬ私です。

今日はまだ外してない。

今日はってところがミソです。

 

「だいたいなんだロン!

今のぼよよ~んって音は!

コメディーやってるんじゃないんだぞぉ!」

↑クレイジー・ドッグ(ベース)

 

「おめぇ~、ホット・ドッグにして食ってやろうか」

↑ロン(ギター)

 

「まぁ~、まぁ~、もちつけ」

↑ハマー(ドラム)

 

「餅つくのかよ!

誤字脱字はおっさんのシンボルマークだろ!

っていうか、今外したの、、、ドラムじゃねぇ~か?」

 

このような、

よくあるバンド初心者の練習風景ですが、

ロンが勝手に工房にステージを作っちゃいまして、

まぁ私も音楽は好きなもんだから、

ロン達とたまにこうしてオチャラケ・バンドで遊んでます。

 

工房奥のキッチンでは、ママとキャサリンがエプロン姿で、

楽しそうに会話に花を咲かせて調理しています。

 

テーブルの上には凄い量のおごちそうが・・・

ママが異常なまでにご機嫌で料理に腕を振るっているのには訳があるんです。

実は、今日マリーがミズーリ州から久々に帰ってくるんです。

 

「ママ、嬉しいのは分かるんだけど、その踊りながら料理するのはやめて」

 

キャサリンがママに注意したくなるのも当然で、、、

ママ!包丁を手にして踊るのだけは止めましょう!

再びステージに目をやると

駐車場に愛車モントークを止めてマックス・デニーロが工房に入ってきた。

 

「相変わらず、ヘタクソだな~」

 

そういって、ロンのギターを取り上げて

 

「リードってのは、こうやるんだよ」

 

バンド経験者のマックスは流れるようなフィンガリングでギターを唸らせる。

 

すると、上空から爆音が轟いて、

Bison工房が崩れ落ちんじゃないかと思う程の振動を降り注いで、

裏庭にMi24ハインド攻撃ヘリが降りてきた。

 

シルバーとブラックを基調に赤や黄色をアクセントに用いた、

まるでF1のマクラーレン・メルセデスのような

度派手にカラーリングされたMi24ハインドヘリから、

さっそうと降りてきたのはアドバン。

 

もう春だというのに真っ黒のロングコートに身を包み

両手をコートに突っ込んで工房に入ってきた。

 

ハインドヘリを操縦して来たスピード・キングは、

お揃いのDestinyの刺繍が入ったチーム・ジャンパーを着た

コンバット・デェイ・ジーを率いて入って来る。

 

キングは連れてきたアドバンとデェイ・ジーを私に紹介してくれた。

アドバンとは既に面識がある。

 

「この間は、無愛想に追い返して悪かったな」

 

「あ、いや。全然気にしてませんよ。」

 

図太い低音を響かせて礼儀正しく返事をするアドバン。

ステージでは、ギターをマックスに取り上げられたロンが、

スピード・キングとじゃれあっている。

 

ロンとマックス、そしてスピード・キングは、

Barracuda(バラクーダ)部隊で過酷な任務を共に戦い抜いてきた戦友だけに

この3人の友情は厚く、互いの心を深く知り合う3人は、

安心して気を許せる仲間でありブラザーである。

 

ドラムを叩いてたハマーが、

 

「スピード・キングのおでましとあっちゃ、

俺達の出番はないな」

 

とクレイジー・ドッグと目を見合わせて言うと、

スティックをキングに手渡した。

 

ハマーとクレイジー・ドッグは、ケイクと歳が近く、

初期の特殊部隊Reverie(レヴェリ)の数少ない生き残りで、

いまでもケイクと行動を共にしている。

 

そのような彼等が所属する「Justice(ジャスティス)」だがその昔、

Justiceを発足し、CIAを退いたケイクをJusticeに誘ったのも、

実を言うとB.O.C. (バランス・オブ・チェンジ)のメンバーであった私である。

 

Justiceは、B.O.C.から独立した組織だがその繋がりは深く、

バックでB.O.C.がしっかりと支えており、

海軍空母の1隻や2隻、

難なく揃えてしまう程の資金力と組織力をもJusticeは備えている。

 

なのにどうして私の工房は、こんなにボロイのだろう・・・

スティックを手にしてドラムにスタンバッったスピード・キングが、

マックス・デニーロのギターに8ビートの切れのいいパンチを浴びせる。

 

「Johnny B. Goode じゃ物足りなくね?」

 

昔バンドでならした腕前を持つスピード・キングが

マックス・デニーロにしかめっ面で言うと

 

「そうだな、あれやるか?」

 

「じゃあデェイ・ジー、ボーカル頼むぜ」

 

スピード・キングに指示されてステージに上がったコンバット・デェイ・ジー は、

ジョニー・デップ扮するジャック・スパロウ船長のようなおかしな目の動きをする奴。

 

 

おかしな動きをするのは何も目だけじゃない。

おかしな動きもする。

要するに彼事態がジャック・スパロウそのものなのだ。

 

アドバンが率いるDestinyの隊員で歳はまだ若い27歳。

 

彼は根っからのロック好きで、

いつもプレーヤー一体型ヘッドホンを付けて、

ロックのリズムを脳みそに送り込んでいる。

 

戦場をリズムで演出する男。

それがデェイ・ジーである。

 

「問題はベースと、キーボードだが・・・」

 

「ニコラのさっきのピアノの演奏ぶりでは、ちょっと頼りないな・・・」

 

とスピード・キングとマックス・デニーロが話してる所に、

ケイクのGT-500が心地よいV8サウンドを奏でて駐車場に入ってきた。

 

 

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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。