【File No.7】ブルース

ブルース

 

Bison工房の裏庭にあるヘリポートに

ド派手なDestinyカラーのMi24ハインド攻撃ヘリが爆音を轟かせて降りてきた。

工房のドアが開いてスピード・キングとアドバン・J・ルークが現れた。

 

「ママいるかい!

あれ? ニーナじゃないか。

なんでここに?」

 

「はい、これでしょ」

 

ニーナが写真をキングに手渡した。

 

「おお、これだこれ」

 

「ねぇ、おじさん」

 

「なんだ?」

 

「ここに写ってる娘さん

物凄く可愛いね」

 

「だろぉ~! これが俺の娘だ!」

 

キングは自慢げに言った。

 

「でもなぁ~」

 

「でも何?」

 

「娘は、さぞかし俺の事を恨んでる事だろうな・・・」

 

キングがちょっとしょぼくれた。

 

「そうかな、娘さんは多分お父さんの気持ち

分かってくれてると思うよ」

 

ニーナが思いっきりの笑顔でキングに言った。

 

「そうかな・・・だとしたら嬉しいけどな」

 

「ねぇ、おじさん。なにか一曲歌って」

 

ニーナに頼まれるとなぜだか断れないキングは、

 

「じゃあ、この写真に写ってる愛する娘に捧げる歌を」

 

といってハーモニカとアコギを取ってステージに上った。

切なく孤独に歌い上げるキングのブルースに

ニーナは静かに聴き入っていた。

 

ニーナ・クイーンと言う名は

彼女のステージネームで彼女の本名は、

 

(※ こちらの曲を聴きながらお楽しみください)

 

「Born To Run」

ウェンディ
俺達は哀しみと共に生きていくけど
俺はこの魂の全てで、お前を愛する。

そしていつの日か
それがいつになるかはわからないけど
俺達が本当に求める場所に辿りつけたら
太陽の下、二人で歩こう。

でもその時までは
俺達あぶれ者は走り続けるんだ。

さあ、ウェンディ
俺達あぶれ者は 走るために生まれてきたんだ。

 

ニーナの瞳からは大粒の涙があふれ出て止まらない。

 

歌い終わったキングに

 

「パパだぁ~い好き!」

 

といって溢れんばかりの笑顔でニーナが抱きついてきた。

突然若い娘に抱きつかれたキングは、ちょっと動揺した様子で言った。

 

「なんで俺がパパなんだ?」

 

すると、奥の作業場で仕事してたBisonが答えた。

 

「さぁ~。ハゲおやじと呼ばれるよかいいんじゃないのか?」

 

ニーナはその後、アドバンからベースのテクニックを教わったりして

日が沈むのも気づかないまま、居心地良いこの空間にずっと浸っていた。

 

彼女がメジャーになってそのパンチの効いたワイルドな歌声と

愛嬌一杯の笑顔で「ロック界の女王」と呼ばれるようになる日はそう遠くなかった。

 

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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。