踊る心
スピード・キングは、
ベースを弾きながらパワフルに歌いまくる
ニーナの歌声に言い知れぬ何かを感じた。
3曲ほど演奏して、
カウンターにカクテルを飲みに来たニーナにキングが話しかけた。
「いい声してるな」
声をかけてきた男の顔は、
どことなく懐かしさを感じさせるもので、ニーナは隣に腰掛けた。
「ありがとう、おじさん見かけない顔だね」
「ああ。今日、はじめてここに来た」
「そうなんだ。何でまたこんな寂れた街の小汚いライブハウスなんかに?」
「いかしたロックを聞かせてくれるバンドがあるって聞いたもんでな」
「へぇ~。それってうちらのバンドの事?」
「みたいだな」
「うれしぃ~! ところでおじさん誰? どっかで合わなかったっけ?
どっかで合ったような気がするんだけど・・・」
「それは無いだろ。お前とは今日が初めての面識だ」
「そっかぁ~。ま、いいや」
反対側に腰掛けていたマリーがニーナに話しかけた。
「シビレちゃったぁ~。さっきのライブ」
「あなた誰?」
「このおじさんの彼女」
「え! おじさんこんな若い子たぶらかしちゃだめじゃん!」
「そうなのよ~。このおじさんにたぶらかされちゃって、もう大変」
「おいおい・・・」
3人は途端に打ち解けて、なごやかに会話が弾んだ。
会話の中でマリーが施設でのライブコンサートの話をニーナに聞かせた。
「おじさんもバンドやってるの? だったら何か一曲歌って聞かせて」
「ここでか? 困ったな」
「ねぇ~お願い」
「じゃあ、バイオリンあるか?」
「え? バイオリン? ちょっと待ってて」
ニーナは楽屋に入ってバイオリンを片手に持って戻ってきた。
「これでいいの?」
「へぇ~バイオリンもあるんだ」
そういったマリーにキングがそのバイオリンを持たせた。
「え? 私が弾くの?」
「俺一人に恥じかかせる訳? マリーも道ずれさ」
「仕方ない。 じゃあやりますか」
「へぇ~マリー、バイオリンが弾けるんだ。 凄い凄い!
じゃあ、あたしが皆に紹介しちゃうね。 おいで」
ニーナはマリーとキングを引っ張ってステージにあがった。
「みんなぁ~! 今日は飛び入りの演奏だよ! マリー・・・なんだっけ?」
「マリー・ガーランドよ。こっちはスピード・キングね」
「そのメリー・ゴーランドとスルメ・おやじの演奏聴いちゃってね」
「今日はスルメかよ、俺はそんなにハゲてねぇ~って。まぁ、いいや
じゃあ、ギター借りるぜ」
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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。
ストーリーはフィクションであり
実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。