ニーナ・クイーン
スピード・キングとマリー・ガーランドは、
薄汚い空気が漂う寂れた小さな街のライブハウスに居た。
この街の孤児施設に例のライブコンサートの話を相談した所、
施設出身の子達が作っているロックバンドがあると聞いて
二人はそのバンドがステージ演奏しているというこのライブハウスに足を運んでいた。
「なんだか、不良が一杯・・・」
見るからに柄の悪い、スレた女の子やトッポいお兄ちゃん達が
グラス片手にタバコを吹かしながら馴れ合っている。
優等生のマリーは、一人だけ見るからに浮いている。
キングはと言えば、全く違和感なくその場に溶け込んでいた。
「マリーは、あれだ・・・
少しはこういう場で遊び心も見につけないと
マジメ一本じゃ、人生つまんねぇ~ぞ」
「うん、今日はしっかり勉強していきます」
「勉強って・・・」
二人がカウンターで話している所に、いきのいいお兄ちゃんが割って入ってきた。
「おねえゃん、かわいいねぇ~。俺と踊らない?」
「誘ってくれてありがとう。だけど私、
今日は彼氏と一緒なの。ごめんなさぁ~い」
「彼氏ってどいつだよ?」
マリーは隣に腰掛けているキングの顔を指差した。
「こ、このおっさんが彼氏なのか?
頭ハゲかかってるぞ!
冗談はよしてくれよぉ~」
「誰がブルース・ウイルスにくりそつだって?」
キングがそいつの手首をひねり込んで、
苦痛で歪める顔のホッペをペンペンと叩いた。
その威圧感に圧倒されたお兄ちゃんは、
気まずそうな顔で後ずさりしてまわりの仲間に
「あいつ只者じゃない。ちょっかい出すんじゃないぞ」
と忠告を促した。
しばらくして、後ろのステージがざわめき出し歓声が飛びかった。
「ニーナ! 今日もパンチの効いたロックで俺をいかせてくれぇ~!」
皆が一様に口を揃えて叫ぶニーナとは、
マリーとキングが見に来たバンドのボーカルの女の子。
ニーナ・クイーンといって歳は17歳。
サン・ライズ・クイーンというバンド名でステージに立っている。
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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。
ストーリーはフィクションであり
実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。