【File No.5】日常風景

日常風景

 

マリーは、春休みの間Bison工房にお泊りしている。

任務で家を留守にする事が多かったケイクだったので、

マリーは子供の頃からよくここで寝泊りしていた。

 

ここにはマリーの部屋だってある。

 

「マリー、ちょっとぉ~~~!」

 

ママが大声で叫ぶ。

 

「ママ!どうしたの?」

 

マリーが2階から駆け下りてくる。

 

「ミミちゃんが脱走したのよ!」

 

ミミちゃんとは・・・

Bisonがマリーが子供の頃、デパートに連れて出掛けた時、

ペット屋さんでどうしてもマリーが飼いたいと言いだして、

二人で買ってきたうさぎである。

 

それはミニうさぎと書いてあるだけにとても小さく可愛い動物だった。

 

こんなに小さくて可愛い動物ならと思って飼う事にしたのだが・・・

数ヵ月後、直ぐに普通のウサギのサイズにまで成長した。

 

あのネーミングは、はっきり言って詐欺である。

 

ママが小屋の掃除をしてたら、ミミちゃんがママの目を盗んで

小屋から抜け出したようである。暴走するミミちゃんをママが必死で追いかけている。

 

マリーも一緒になって追いかける。

二人と一匹が工房中を駆け回っている。

 

その中にあって、黙々と自分の世界に入り込んで作業に没頭してるのが私である。

私が作業に没頭している時は、何を話しかけても無駄である。

 

「フンフン、分かった。分かった」

 

と返事だけはするが、実はなんにも聞いていない。

 

聞いていないんじゃなくて、

作業に集中し過ぎてそれ以外の事が脳ミソに入り込む隙間が無いのである。

 

ミミちゃんを取り押えた二人は、裏庭で一緒にうさぎ小屋の掃除をはじめた。

そこにあのニーナがやってきた。

 

「こんにちは~!」

 

「ふんふん」

 

「あの~」

 

「分かった。分かった」

 

「すいません」

 

「ふんふん」

 

「あの~」

 

「分かった。分かった」

 

背を向けて空返事だけ返してくるいい加減なこの男に、

ニーナは歩み寄って後ろから耳元で力いっぱい叫んだ。

 

「こんにちはぁ~!」

 

流石のBisonもびっくりして振り返ってニーナの顔を見た。

しかし、

 

「ふんふん」

 

と言って、また作業をやりだした。

そこへお掃除が終わったマリーが2階に戻ろうと工房を通りかかった。

 

「ニーナじゃないの!」

 

ニーナの姿に気づいたマリーが嬉しそうにニーナを迎えた。

 

「遊びにきちゃった」

 

ニーナはニッコリと笑顔で挨拶した。

ニーナとマリーは、二人とも父親と過ごした思い出がない。

 

似たような境遇の者どうしというのは、不思議と波長が合うもので、

互いの事を理解し合うのにもそんなに時間はかからない。

 

先日のライブハウスで二人は初対面ではあったが、

マリーはニーナの事を妹のように、

ニーナはマリーの事を姉のように思える程、意気統合していた。

 

「凄い、ステージもあるんだ!」

 

奥のステージに目がいったニーナが、

ステージに無造作に於いてある楽器類を好奇心で眺めると、

 

「奥の部屋にもまだ一杯色んな楽器があるのよ」

 

と、マリーが案内してそれらを見せてあげた。

ハモンドオルガンにアコギにトランペット、サックスホーンにウッドベース。

そこには一通りの楽器が所狭しと詰め込まれていた。

 

「そこのカウンターに座ってて、今ジュースついで来るから」

 

そういわれてニーナは工房のカウンターに腰掛けた。

 

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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。