フィラデルフィア計画
1943年10月28日
それは、
成功すれば世界を変革したであろう、
壮大な実験であった。
巨大な軍艦を、
一瞬にしてありえないほど離れた場所に移動させる。
もしそれが可能になったなら、
航空機はおろか、大陸間弾道弾の必要性さえ失われる。
そして、実験は行われ……
実験そのものが、歴史の闇に葬られた。
実験は成功だったとも、
失敗だったとも言われている。
その真偽を確かめる術はない。
軍艦は確かに移動したとも言われているが。
移動した先には、ある者は柱に、ある者は隔壁に。
船と人が「融合」した、地獄図があったとも言う。
やがて時は流れ、
そのような実験があったことさえ、
覚えている者も少なくなった頃、
軍の高官が次々と暗殺される事件が起こった。
当時(1999年)FBI捜査官だったキャサリンがこの事件を調査していたが、
厳重な警備をものともしない、不可解な手口に捜査は困難を極め、
犯人を特定することさえできないまま、暗殺も終わりを告げる。
捜査中、
何かしら得体の知れない大きな圧力がFBI組織内にまで及び、
キャサリンはこの事件を犯人を突き止める事無く捜査を打ち切らざる負えなかった。
その後、
彼女はFBIを離れJusticeに入り、
事あるごとにその事件を追及してきた。
そして、ついに彼女はその事件の核心部に辿りつつあった。
彼女は最近になって、
当時この実験に関っていた陸軍高官とコンタクトをとる機会を得、
実験の意外な展開を知る。
兵器や兵員を移動させるという意味においてあの実験は、確かに失敗だった。
しかし、高官の話によれば、
当初の目的とは違った形で実は実験は成功していたと言う。
生還した乗組員の数人の体にある変化が起きていた。
それは全く別の意味での最強の兵器を造り上げる成果を確かにあげていた。
当時その事に気づく物もないまま
実験は失敗したものとして葬られたが
唯一人だけその事に気づいていた人物がいたという。
高官は、
「最後に一つ。これは私の独り言だと思って聞いてくれ」とくいをおし、
次のようにキャサリンに語った。
「海軍も、陸軍も、あの実験は失敗だったと考えている。
陸軍、航空隊、後の空軍の一派は、実験そのものを阻害しようとさえした。
積極的だった者たちでさえ、将来性に見切りをつけた。だが……」
「だが?」
「実験の直後、あの実験の全てのデータを持ち出し、
姿を消した陸軍高官がいる」
「その後の彼の消息は完全に不明だ。それだけではない。
彼の前歴をたどったところ、彼の出生、生育過程、その他
様々な経歴に不審な点が続出した。情報の改竄どころではない。
『捏造』された記録としか思えんのだ。
『彼』は、最初から存在しなかった。そうとしか考えられない」
「誰なんです? その男は?」
「私にそれを口にする権限はない。
知りたいのであれば自分達で調べる事だ。
・・・エリア51を」
その陸軍高官の言葉通り、
ロンのエリア51の調査結果からとんでもない事実が浮かび上がった。
その資料を持ってキャサリンは今、
ケイクとある人物のもとを訪れた。
既に70を過ぎた老人ではあるが鋭い眼光と、
威圧感を持って発せられる重く響きのある声に
国防総省長官という重職を経験してきた人物ならではの貫禄を未だ漂わせていた。
これまでの調査内容を提示したケイクに彼は静かに語りかけた。
「フィラデルフィア実験、か。
ずいぶん古い話をほじくりかえしたものだな・・・」
「あの実験のあと全ての試料を持ち出した人物こそ、
その後エリア51において
インプラントによる人体実験を繰り返してきた人物なのでは?」
キャサリンの問いに彼はしばし考え込み意を決したかのように喋り出した。
「この件について私が口を開けば、
私も即座に消されてしまうだろうが、
ここまで君達が調べているのなら、
話しても差し支えないだろう。」
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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。
ストーリーはフィクションであり
実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。