【File No.3】悪魔の皇帝

悪魔の皇帝

 

ケイク・アート

 

私の古くからの友人である。

ゆくゆくは、CIA長官にまで上り詰めるであろうと言われていた男だが、

パンナム機爆破事件の後、

突然、CIAを去っていった。

 

事件後、彼が引き取った幼い少女の存在が

彼の心に何かしらの変化をもたらした事は間違いないであろう。

 

その後、彼は

何かに導かれるようにJusticeに籍を転じる。

そこで情報活動をしていく中で、

彼にはどうしても必要なモノがあった。

 

部隊として活動するのであれば機関銃やバズーカ等の大型武器も導入できるが、

一般人を装って活動する情報捜査員がそのような大型兵器を持ち歩く事は有り得ない。

だが、Justiceの任務は、時としてFBIやCIA、そして軍隊をも敵に回す事が多く、

捜査活動がそのような状況下に展開した際、ハンドガン1丁では太刀打ち出来るものではない。

 

ハンドガンでありながらも、

大型兵器にも匹敵するモノ

 

彼がその相談をしに私の工房に訪ねて来たのは、

かれこれ15年前の話。

私は丁度ワイルド・Bisonを完成させていた。

 

取り出したシーザーをカウンターに置くと、

ケイクは興味深くそれを手に取った。

 

「これは・・・」

 

 

手にしたそれは、

今だかつて見たことも無いブレイクGUNで、

そのGUNから伝わる

「なにか」が

彼の全身を激しく貫いた。

 

「ブレイクさせてみろ」

 

言われるまま、彼はその銃をブレイク・オープンさせた。

 

「!」

 

めったな事で顔色を変えないケイクが、

目を見開いて視線を注いだその先には、

えたいの知れないシリンダーが不気味な形相をあらわにしていた。

 

「カートが無い・・・」

 

「シリンダーそれ自体が一つの大きなカートになっている」

 

その異様な構造が何を意味するかをケイクは即座に悟り得た。

 

「ワイルド・キャットか・・・」

 

「そんなもんじゃない。ワイルド・バイソンだ」

 

「ワイルド・バイソン・・・野生の猛牛、、、か」

 

「撃ち終わったらどうやって再装填する?」

 

そういってケイクはオープン状態のシリンダーに手を掛けた。

 

「そういうことか、、、」

 

シリンダーは無抵抗なままフレームから分離した。

「シリンダーごと交換するんだよ」

わたしはスペアのシリンダーをケイクに手渡した。

そこには通常の44カートが納まっている。

 

「44マグナムも撃てるのか・・・」

 

「いや、こっちは火薬量を抑えたただの44カート弾だ」

 

「なるほど・・・」

 

その銃のポテンシャルは、まさにケイクが必要としていたそのものだった。

 

「これを俺に使わせてくれないか?」

 

「お前の頼みとあってもそれは断る」

 

「なぜだ?」

 

「人が撃てる銃じゃないんだよ、こいつは」

 

私はそう言って私の左腕を彼の前に差し出した。

 

「見てみろ。俺の左腕はこれ以上上げる事が出来ない。

この恐るべき破壊力を身に付けた銃が、

俺の左肩の関節を完全に粉砕した。

利き腕をかばって試射して正解だったよ。

こいつは、Devil’s・シーザー、悪魔の皇帝だ」

 

そう説明してシーザーを直し込もうとした私にケイクが言った。

 

「悪魔の皇帝か、、、面白い。

その悪魔をねじ伏せてみせるぜ」

 

「ねじ伏せる? そんなアマな銃じゃないよ」

 

「ねじ伏せる事が出来ないなら、ねじ伏せなければいい」

 

ケイクはくわえタバコで笑みを浮かべながらそう言った。

 

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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。