【File No.2】巧みな手口

巧みな手口

 

アメリカ・コネチカット州ニュータウン

豊かな表情の四季とイギリス植民地時代の雰囲気が残るのどかなこの町で

事件は起きた。

 

2012年12月14日、

サンディフック小学校に侵入した当時20歳のアダム・ランザが、

校内で自動小銃AR15を乱射。20人の児童と6人の教職員が、

その凶弾の犠牲となった。

 

いたいけな子どもたちが一度に20人も殺されるという

アメリカ史上類を見ない惨事に全国の市民が膝を落とし涙した。

だが、この凄惨な事件を経験してもなおアメリカは、

銃を規制する連邦法を可決できないでいる。

一言で言えば、

 

「銃があれば乱射事件を防ぐことができる」

 

という世論が根強いからだ。

テキサス州選出のとある共和党下院議員は、この事件について

 

「校長がM4ライフルを持っていれば、このようことにはならなかったのです」

 

と、テレビ番組で公言。

実際テキサス州では2016年1月1日から

145年ぶりに公共の場で他人に見える形での拳銃の携帯が認められる

いわゆるオープンキャリーが施行された。

 

Wild-Bison 第一部 Vol.1

 

今日は

先日仕上がったばかりのINSIST・カイザーを引き取りに

ネバダ州からロン・スミスがやってくる。

 

ロンとはその昔、

ニューヨークの無法地帯「ヘルズ・キッチン」で出会ったのだが、

ワルの匂いを漂わせるあいつが、まさかそういう機関の人間だったとは、

後で知って随分と驚いたもんだ。

 

 

今日も朝食後のコーヒー・タイムをくつろいでいると

工房の窓越しに

心地よいOHV独特のエンジン・サウンドが鳴り響く

ハーレー・ダービットソン

ダイナ・スーパーグライド・カスタム

 

 

やつのお出ましだ。

私は、先日仕上がったばかりのINSIST・カイザーを右手に握りしめた。

 

 

ハーレーに乗ってやってきたジーンズに革ジャン姿の男が

工房に足を踏み入れた瞬間、

奴に向けて6発の弾丸をぶっ放した。

男の右斜め後方に2発、左斜め後方に2発、そして最後の2発は足元に。

男は驚くこともなくニヤリと笑みを浮かべて言った。

 

「で、それから?」

 

そう奴に言われるまでもなく私は

左手に持っていたコーヒーカップをテーブルに置くと

右手に握っているINSISTを片手で無造作にブレイクさせ

左手でシリンダーを取り外ずし

 

 

テーブルに用意しておいたスペアシリンダーと交換して

新しいシリンダーをINSISTに装着した。

そのアクションを満足げに見とどけた男は

 

「いいね~♪ そのアクションだよ! 俺が求めていたのは!」

 

「ご希望通り片手ワンアクションでブレイク出来るように仕上げてやったぜ」

 

「すっげぇ~!」

 

そういって目を光らせて歩みよって来たステーブ・マックィーン似のこの男

 

 

名をロン・スミスと言う。

仕上がったINSISTを引き取りにネバタ州からはるばるやってきた。

INSISTを手にしたロンは、ニヤけ顔で数回ブレイク操作を確認し

 

「完璧だぜ さすがおっさん!」

 

と私の肩を叩く。

 

「大したもんだぜおっさんはよ~」

 

「おだてても麦茶ぐらいしか出せんぞ」

 

「いや、こぶ茶で十分なんだが 実はもう一つ頼みたい事が・・・」

 

「お前の頼みとあっちゃ~、断るしかないな!」

 

ロンの言葉を速攻で遮断した。

ロンは、自分の世界をしっかりと身につけた個性身溢れるやつで、

どういったモノが自分に似合って、

どういうモノが自分には似合わないかを知り尽くしている。

その為やつのモノに対する拘りは半端ではない。

 

あいつが乗っているシェルビーの427コブラもレプリカでは無く、

31台しか作られなかった本物のSCだ。うかつな返事は出来ない。

 

「今使ってるもう一丁のカスタム・Bisonのリボルトなんだが~」

 

「リボルトがどうかしたのか?」

 

「どうもしちゃいねぇ~んだけど、いい事を思いついた」

 

「そうか、それは聞かないでおこう。おまえの心の中に大事に閉まっておけ。」

 

「聞きたくねぇ~のか? すげぇ~いいことなんだぜ。 残念だなー」

 

それから数時間、車とバイクの話題を持ち出してGUNの話を遠ざけた。

 

「ところでおっさん 今日は面白い映画のDVDを持ってきたから一緒に見ようぜ」

 

そういってロンがカウンターに取り出したDVDのタイトルは

 

「バック・トゥ・ザ・フューチャーⅢ」

 

二人でコーヒーを飲みながら鑑賞していると、

映画の中に私の目を引き付ける面白いGUNが登場した。

 

 

私の目の色が変わったのを見届けて、ロンが言った。

 

「リボルトをあんな風にしてくれ^^」

 

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※ このストーリーは個人の趣味レベルで創作を楽しんでおります。

ストーリーはフィクションであり

実在する国家・団体・企業・HP・個人等とは一切関係ありません。